太宰治の真骨頂は、自身のリアルな体験や感情を徹底的に解体・再構築する私小説のスタイルにある。戦後文学の金字塔とされる『斜陽』は、没落貴族の生き様を描き、世間に「斜陽族」という言葉を定着させるほどの大反響を呼んだ。この作品の背景にも、愛人であった太田静子の存在とその日記があった。
そして遺作となった『人間失格』。「恥の多い生涯を送って来ました」というあまりにも有名な冒頭で始まるこの作品は、太宰自身の人生の集大成であり、自己否定の極致である。自己の醜悪さや苦悩を極限まで突き詰め、芸術の域にまで昇華させたからこそ、この小説は半世紀以上が経過しても色褪せない強烈な光を放ち続けている。