2013年8月に社長へ就任したサラ・カサノバ氏を待ち受けていたのは、日本マクドナルド史上最大の試練でした。2014年に中国の取引工場で発覚した期限切れ鶏肉問題、そして翌2015年の異物混入トラブルが重なり、世論から猛烈なバッシングを浴びて会社は過去最大の赤字(約347億円)に転落します。
当初は記者会見での対応が批判を浴びたものの、カサノバ氏は逃げることなく泥臭い改革に着手しました。自ら全国の店舗を回って母親たちの生の声を聞く「ママトーク」を実施し、全店舗の約9割を改装。オープンキッチン化で安心感をアピールするとともに、「名前募集バーガー」や「マクドナルド総選挙」など、SNSを活用した参加型プロモーションを次々と成功させました。
この徹底した現場主義により、わずか数年で驚異的なV字回復を達成。2019年に社長兼CEOの座を日色保氏に譲り、自身は代表取締役会長として経営を支えました。そして2026年3月の株主総会をもって取締役を退任し、日本マクドナルドを完全に去ることとなりました。
気になる退任理由について、同社は「本人の意向による勇退」と発表しています。長年にわたり日本を含むアジア各国で多忙を極めたことから、故郷であるカナダに帰国し、家族との時間を優先するための円満退任でした。現在のカサノバ氏は母国カナダを拠点にしつつ、長年培った外食産業の知見を活かし、グローバル企業の社外取締役や慈善活動に携わるなど、穏やかで充実したセカンドキャリアを歩んでいます。