かつて「低音の魅力」と「圧倒的なシャウト」で聴き手を圧倒した中森明菜だが、現在のボーカルスタイルは明らかに深化を遂げている。高音域を張り上げるかつての手法から、息遣いそのものを楽器のように扱うウィスパーボイスと豊かなミドルローを活かした表現へとシフトした。
ラジオ特番や限定的な音声メッセージで聴くことができる彼女の声には、人生の光と影を味わい尽くした者だけが持つ独特の温もりが宿る。大手地上波テレビ局からの出演オファーは現在も絶えないが、彼女自身は過度な演出や過去のドラマシップを消費されるような露出には一線を画し、音質と世界観を守れるメディアやイベントだけを慎重に選んでいる。