製造拠点のツアーは、いまや熾烈な予約争奪戦の舞台となっている。受付開始から数分で枠が埋まる人気施設が続出する一方で、一般にはあまり知られていない無料の隠れ家的スポットも静かな熱狂を生んでいる。各社が趣向を凝らした最新の公開ルートでは、従来は立ち入りが厳しく制限されていた調合室の直近や、最新鋭の検査システムを真上から見下ろす専用キャットウォークなどが相次いで解禁された。
なかでもビールや飲料の製造拠点は、五感を刺激する仕掛けが際立つ。原材料のホップや麦芽に直接触れ、発酵タンクの底冷えする温度差を肌で体感した直後に注がれる極上の一杯は、格別の説得力を持つ。無料で参加できる施設であっても、専任ガイドによる丁寧な解説や限定記念品の配布など、採算度外視とも思える充実ぶりが目立つ。
予約枠の確保にはコツがいる。多くの施設が設定する予約受付日の午前0時や午前9時の瞬間にアクセスを集中させるだけでなく、直前のキャンセル枠を狙う定期的な確認が欠かせない。限られたチャンスを手にした者だけが、稼働する巨大マシンの圧倒的な迫力を独占できる。