二人の関係が世の知るところとなったのは2007年春のことだ。当時、一青窈は『ハナミズキ』や『もらい泣き』の空前のヒットにより、唯一無二の詩情と歌声を持つシンガーソングライターとして確固たる地位を築いていた。一方の小林武史は、Mr.Childrenをはじめとする数々のアーティストをヒットチャートの頂点へと導いた、日本音楽界の最高峰に位置する知性のプロデューサーだった。
交際の発覚は、音楽業界全体に激震を走らせた。当時、小林はMy Little Loverのボーカルであるakkoと婚姻関係にあり、二人の幼い子供の父親でもあったからだ。メディアは一斉に「不倫」「略奪愛」のショッキングな見出しを躍らせ、二人の動向を24時間体制で追いかけた。世論の過熱したバッシングは凄まじく、一青窈の透明感あるイメージや作品世界への影響を懸念する声も噴出することとなった。
しかし、当事者たちの内面で燃え上がっていたのは、世間の批判を寄せ付けないほどの圧倒的な創造的エネルギーだった。批判の嵐が吹き荒れる中、二人は密室のスタジオに籠もり、怒涛の勢いで楽曲制作を敢行する。プライベートの泥沼化とは裏腹に、世に送り出されるサウンドはどこまでも鋭利で、生々しい情感に満ち溢れていた。