宝塚歌劇団99期生としてキャリアをスタートさせた彼女は、男役としての型や美学を愚直なまでに追求してきた。肩の入れ方、視線の送り方、そして何より低音域における豊かな響かせ方。これらは一朝一夕に獲得できるものではなく、日々の血の滲むようなレッスンと実戦の積み重ねが生み出した財産だ。
退団を経て、その技術はさらに解放された。男役という型を解体しつつも、そこで養われた骨太な軸は決してぶれない。女性ヴォーカリストとしてのニュアンスや高音域のしなやかさを手にしたことで、彼女のボーカルレンジと表現の幅は、かつてない広がりを見せている。