ガラガラと引き戸を開けると、店内は昼どきを過ぎてもなお満席だ。パイプ椅子に腰掛け、湯気立つ丼に顔をほころばせる人々。かつては近接する工場の作業員や地元の常連客が中心だった客層に、近年明らかな変化が生じている。スマートフォンを手に、レトロな店内写真や料理を写真に収めるZ世代や海外からの個人旅行者の姿が急増しているのだ。
デジタルネイティブと呼ばれる世代が求めているのは、計算されたマニュアル接客ではない。注文を取るおかみの気さくな声掛け、長年の歴史が染みついた木目調のテーブル、そして何より「本物の人の温もり」だ。整わされすぎた都市の飲食店に少し疲れた若者たちにとって、この空間は単なる食事の場を超えたリフレッシュの聖地となっている。