バンクシーの真骨頂は、資本主義や権力構造、戦争に対する鋭い政治風刺にある。反骨のメッセージをポップなステンシル技法で街頭に刻み込むスタイルは、世界中のファンを魅了してきた。しかし、そのメッセージ自体が現代アート市場の巨大な資金力に呑み込まれ、オークションハウスで高額落札される皮肉な現象が起きている。
権力に対する痛烈な仕掛けであるはずのネズミが、東京都知事という権力者の笑顔とともに拡散された構図は、現代アートが持つ「回収の構造」を象徴している。作品が商品化され、行政に取り込まれるプロセスそのものが、現代社会の歪みを映し出す鏡となっている。