「文系不要論」が日本社会で爆発的に広まった最大の契機は、2015年6月に文部科学省が各国立大学へ送付した通知にあります。通知内に「人文社会科学系や教員養成系の学部・大学院について、組織見直しや廃止、社会的要請の高い分野への転換」を求める文言が含まれていたことから、一部メディアが「国が文系学部を廃止しようとしている」とセンセーショナルに報じ、国内外の研究者や教育関係者から大猛反発を招きました。
しかし、この「文系学部廃止」という言説は明らかなミスリードでした。文科省が意図していたのは、少子化が進むなかで旧態依然としたカリキュラムを放置せず、地域連携や実社会の課題解決に即した教育へと再編することでした。実際に文科省はのちに「文系を軽視する意図は一切ない」と異例の釈明を行っています。
それにもかかわらず、「文系は国力に直結しない」「即効性のある科学技術に予算を集中すべきだ」という実用主義的な言説だけが一人歩きし、現在まで続く「文系不要論」の土台が形成されてしまいました。