世界を揺るがした傑作の存在を抜きにして、この躍進は語れない。第77回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞した『スパイの妻』は、まさにその金字塔だ。太平洋戦争前夜の神戸を舞台に、美しくも残酷な運命に翻弄される夫婦を描いた本作は、もともと8Kドラマとして制作された。それが劇場版としてスクリーンにかけられるやいなや、世界中の批評家を唸らせたのだ。
一方で、太平洋戦争末期の科学者たちの葛藤を描いた『太陽の子』もまた、観る者の心に深い爪痕を残した作品である。若き天才たちが抱く情熱と悲劇。どちらの作品にも共通しているのは、歴史の暗部に真正面から向き合いながら、決して娯楽性を損なわないという高度なバランス感覚だ。単なるノスタルジーに逃げず、現代に通じる問いを投げかける姿勢こそが、世界的評価の根幹にある。