かつて市場飯といえば、東京の築地や豊洲、あるいは金沢の近江町といった大都市圏の巨大市場が主役だった。しかし、その潮流は明確に全国の地方漁港へと拡散している。宮城県の塩釜、静岡県の沼津、山口県の唐戸、鳥取県の境港。旅人たちが目指すのは、都市部では決してお目にかかれない「その土地その日の旬」だ。
「半年前まで都内のデパ地下で買っていた刺身とは、歯ごたえも香りもまるで別物です」。そう語るのは、早朝5時に小田原漁港の食堂に並んでいた30代の会社員。夜行バスやカーシェアを駆使してでも、夜明け前の市場を訪れる若年層が急増している。SNSでのバズ消費を超え、「競りの熱気を五感で浴びながら喰らう」という没入型体験が、現代の旅のハイライトとなっているのだ。