音楽界における水谷豊 歌唱力 評判については、発売当初から今日に至るまで興味深い議論が交わされてきました。いわゆる正統派の声楽的な声量やベルティング唱法とは異なり、水谷豊のボーカルは独特のハスキーさと脱力感を湛えた「語りかけスタイル」です。
初期の批評では「線が細い」「役者の余技」といったステレオタイプな見方も一部に存在しました。しかし、音楽ファンやプロの耳が評価したのは、言葉の母音を繊細に響かせる独特のフレージングと、感情を押し殺したようなメランコリックなニュアンスです。力まないウィスパーボイスは、鈴木茂の精緻なアレンジメントと絶妙なバランスで溶け合い、押しつけがましくない心地よい哀愁を醸成していました。
この歌唱法の魅力は、後年のカリフォルニアコネクション カバーの歴史を見ても明らかです。及川光博をはじめとする多くのアーティストや企画盤で再解釈されてきましたが、原曲が持つ「粋でどこか切ない空気感」を完璧に表現することは極めて難易度が高いとされています。水谷豊自身も2008年の音楽活動再開以降、セルフカバーアルバム『TIME CAPSULE』などで本楽曲を円熟のボーカルで再録音し、往年のファンのみならず新たなリスナーを感嘆させました。