国内での選択肢が絶たれている現状を受け、自らの死期を自分で決めたいと願う一部の患者が選んでいるのがスイスへの渡航です。スイスでは、利己的な動機がない限り自殺幇助が刑法上処罰されないため、「ライフサークル」や「ディグニタス」といった非営利団体が外国人を受け入れています。
しかし、スイスでの医師幇助自殺は決して簡易なプロセスではありません。実行に至るまでには極めて厳格なハードルが課されています。
まず求められるのが医学的要件と意思能力の証明です。「回復の見込みがない重篤な疾患であること」「耐え難い苦痛があること」「認知症などがなく、完全な判断能力を有した状態で自発的に希望していること」が必須となります。膨大な診断書や診療報酬明細を英語または現地語に翻訳し、現地の医師による複数回の面談審査を通過しなければなりません。
さらに、経済的・身体的な負担も莫大です。団体への登録費用、医師の診断・致死薬処方料、現地での火葬や遺体搬送費用、同伴者の旅費などを含めると、総額で約200万〜300万円以上の費用が発生します。加えて、自力でスイスまで長距離移動できるだけの体力が残っている段階で決断しなければならないという「タイムリミットのジレンマ」が、多くの患者と家族を苦しめています。