愛犬の予防医療を理解する上で、まず明確に区別すべきなのが「狂犬病予防注射」と「感染症予防の混合ワクチン」です。両者は同じ注射であっても、法的な強制力と対象となる病原体の性質が全く異なります。
狂犬病予防注射は、日本の「狂犬病予防法」によって生後91日以上のすべての飼い犬に年1回の接種が義務付けられている法定ワクチンです。接種時期は原則として毎年4月1日から6月30日の間と定められており、接種後に自治体へ届け出て「注射済票」の交付を受ける必要があります。狂犬病は発症すると致死率がほぼ100%に達し、人にも感染する人獣共通感染症であるため、公衆衛生の観点から法的な義務となっています。
一方の混合ワクチンは、犬同士で広がる重篤なウイルス性・細菌性感染症を防ぐための任意接種です。混合ワクチンはさらに、世界小動物獣医師会(WSAVA)のガイドラインにおいて「コアワクチン」と「ノンコアワクチン」に分類されています。
コアワクチンは、感染力・致死率が極めて高く、すべての犬が生活環境を問わず接種すべきワクチン(犬パルボウイルス感染症、犬ジステンパー、犬伝染性肝炎など)を指します。これに対しノンコアワクチンは、地域的な感染リスクや生活習慣(アウトドア、山歩き、ドッグランの利用頻度など)に応じて追加を選択するワクチン(レプトスピラ症、犬パラインフルエンザなど)です。