今作の白眉は、無駄なセリフを極限まで削ぎ落とした「間」の表現にある。舞台の多くが限定された一室で展開されるため、役者同士の吐息や微小な視線の動きがそのまま物語の駆動装置となるのだ。撮影に関わったカメラマンは、「カメラを回していることすら忘れるほどの静寂が現場を支配していた」と証言する。
言葉よりも沈黙が雄弁に感情を語る瞬間がある。清水の一挙手一投足に対し、山下が瞬時に研ぎ澄まされた反応を返す。幾度となく重ねられたリハーサルによって洗練されたその演技合戦は、見る者の神経を削るようなスリリングな体験を提供している。