社会学やメディア論の観点から平成の終焉を分析すると、生前退位による改元は日本社会に極めて健全な「心理的バウンダリー(時代の区切り)」をもたらしたと言えます。
昭和から平成への改元時は、昭和天皇の闘病に伴う「自粛ムード」が国全体を覆い、プロ野球の祝勝会や各地の祭礼が中止となるなど、重苦しい空気が社会を支配しました。対照的に、平成から令和への改元は「退位」と「即位」という慶事の連続として設計されたため、国民は前向きな祝祭ムードの中で時代を見送ることができました。
バブル崩壊、デフレ経済、阪神・淡路大震災や東日本大震災など、数々の激動を経験した平成という時代に対し、人々は「平成最後」というキーワードを通じてカルチャーや消費、個人の歩みを振り返る時間的猶予を得ました。社会全体が過去への感謝と清算を行い、新たな時代へ心理的ストレスなくソフトランディングを果たせた点において、平成31年4月30日という明確な終着点は、極めて高度な国家的ガバナンスの成功例であったと評価できます。