「自分を心から欲してくれる場所で、最後の一球まで泥にまみれて戦いたい」。そう周囲に明かしていた男の背中を押したのは、計算や打算を凌駕する熱量だった。中日ドラゴンズへの入団を決めた舞台裏には、単なる戦力補強の枠を超えた人間同士の対峙が存在した。
オファーの席で手渡された契約書以上に重みを持っていたのは、チームの再建を託すというストレートな意志だ。「勝ちに行くために、お前の打力と勝負強さがどうしても要る」。直接伝えられた言葉は、傷つき伸び悩んでいた主砲の自尊心を強く揺さぶった。条件面での駆け引きではなく、打者としての存在価値を全面的に肯定されたことが、移籍という大きな一歩を踏み出す決定打となったのである。