多くの人々が「内裏様」を最上段に並ぶ男性の人形単体を指す言葉だと解釈している。だが、これは昭和初期に広まった童謡の歌詞に起因する親しみやすい「錯覚」にすぎない。本来、内裏とは天皇の住まう御所そのもの、あるいは天皇・皇后のお二人を併せた称呼であった。
つまり、最上段に坐す一対の人形は本来、男性の人形を「男雛」、女性の人形を「女雛」と呼ぶのが歴史的にも正しい。二体揃って初めて宮中の姿を模した「内裏」を象徴するのである。長年信じられてきた「お内裏様=男雛」という図式は、近現代のポップカルチャーがもたらした文化の変容劇と言えるだろう。