モロッコの街を歩くと、老若男女を問わず多くの人がすっぽりと頭を覆う尖ったフード付きの長袖ローブを着ている光景に出会います。この代表的な民族衣装は「ジュラバ(Djellaba)」と呼ばれ、特徴的なフードには現地で「コブ(Qob)」という固有の名称がついています。
このコブには、単なるファッションや宗教的な装飾にとどまらない、現地の過酷な気候風土に適応するための合理的な理由が詰まっています。
① 強烈な直射日光と砂嵐からの防護
モロッコは国土の多くが乾燥帯や地中海性気候に属し、夏場は肌を刺すような強い紫外線が降り注ぎます。砂漠地帯から吹き荒れる激しい砂嵐から頭部、首筋、目元を守るため、深く被れる立体的なフードが不可欠でした。
② 昼夜の激しい寒暖差と冬の防寒
「砂漠の夜は冬のように冷える」と言われる通り、日没後は急激に気温が下がります。また、アトラス山脈周辺では冬場に雪が降るほど冷え込みます。ウール製のジュラバに備え付けられた厚手のフードは、冷たい風を遮断する天然の防寒具として機能します。
③ 荷物を持ち運ぶ「即席ポケット」としての実用性
フードを被っていない時、背中に垂れたコブは袋状のスペースを作ります。現地の人々はここに焼きたての平焼きパン(ホブス)や果物、財布や鍵などの小物を入れ、バッグ代わりに活用してきました。手ぶらで移動するための生活の知恵がそのまま形になっています。
④ 礼拝前の集中や移動時の仮眠スペース
イスラム教の礼拝時に周囲の視界を遮って集中したり、長距離移動のバスや日陰で仮眠を取る際に顔を隠したりする実用的な役割も果たしています。