エンタメ作品において、先住民族の描写は常に繊細な配慮を要する。しかし本作は、アイヌ文化を単なる「珍しい背景設定」として扱うのではなく、物語の重要な核として丁寧に描いた点が高く評価されている。言語や生活習慣、自然への感謝を忘れない「カムイ(神)」の思想、伝統的な衣装の模様に至るまで、千葉大学の中川裕名誉教授ら専門家の厳密な監修のもとで描き出された。
作中に登場するアイヌ料理の描写は、読者の食欲を大いに刺激する。鹿肉の生食や脳みそに塩を振って食べるシーンなど、一見すると衝撃的な文化も、アシリパの誇り高き解説を通じて読者に温かく受け入れられていく。「他者の文化を尊重し、共に生きる」というテーマが、エンターテインメントの力を借りて自然に胸にしみ込んでくる。
明治という激動の時代背景、退役軍人たちの葛藤、旧幕府軍の残党である土方歳三の暗躍など、実在の歴史とフィクションが精密な歯車のように噛み合う感覚。歴史ファンをも唸らせる緻密な時代考証こそが、物語全体に重厚な説得力を与えている。