今日の巨大なブランド帝国の礎を築いたのは、オレゴン大学の陸上選手だったフィル・ナイトと、彼のコーチであったビル・バウワーマンだ。1960年代、自作のワッフルソールから始まった小さな試みは、やがて世界のスポーツ用品製造業における勢力図を根底から覆すイノベーションへと発展した。革新的なクッショニング技術と先鋭的なデザインの融合は、運動靴という概念そのものをアートの域へと引き上げた。
創業者が掲げた「足を持つすべての人にインスピレーションを」という哲学は、現在の流通システムにも息づいている。グローバルな巨大マーケットで生まれた過剰在庫やプロトタイプに近い試作品は、巡り巡ってアウトレットの店頭へと届く。それらは過去の遺物ではなく、ブランドが挑み続ける飽くなきイノベーションの軌跡そのものと言えるだろう。イノベーションの最前線に触れられることこそ、ナイキが持つ最大の魅力なのだ。