犬と人間、猫と人間の関係性を比較した際、動物行動学者たちが口を揃えて指摘するのが「コミュニケーション言語の切り替え」の有無です。犬は人間に対して、仲間の犬には見せない服従のポーズをとったり、人間の視線を頻繁に伺ったりと、明確に「人間向けの態度」を使い分けることが知られています。
対照的に、猫は人間に対しても同種の猫に対するのと全く同じ行動レパートリーで接してきます。ピンと尻尾を垂直に立てて近づく挨拶、頭や体をこすりつけるフェロモン分泌(アロボウビング)、毛づくろい(アログルーミング)、喉をゴロゴロと鳴らす仕草などは、すべて母猫や親しい同居猫の間で交わされる親愛のシグナルそのものです。専門メディアやYahoo!ニュースエキスパート等で猫の行動心理を発信する識者たちも、「猫は人間を別の種族の主人として見上げるのではなく、友好的で巨大な猫の仲間として扱っている」という見解を支持しています。
さらに興味深いのは、猫が人間を「少々不器用な仲間」と見なしている節がある点です。獲物を上手に捕まえられない同居猫を気遣うように、飼い主の枕元におもちゃや小動物を運んでくる行動は、子猫や狩りの下手な仲間に対する教育・分配行動の延長線上にあると考えられています。人間側が「お世話をしている」と自負している裏で、猫側は「体の大きな不器用な同居人を甲斐甲斐しく気遣っている」のかもしれません。