麻生太郎氏を巡る一連のフィーバーは、個人の好みの域を超えて、自由民主党の政策構想にも大きな影響を与えた。当時、同氏が提唱した「クールジャパン」戦略やコンテンツ産業の振興策は、日本のサブカルチャー産業を基幹産業および外交資源として位置づける先駆的な試みだった。秋葉原の路上で街頭演説を行った際には、数千人規模の若者が詰めかけ、「オタク文化の理解者」としての支持を決定づけた。
日本が誇るアニメや漫画、ゲームというソフトパワーを国際外交の前面に押し出す「文化外交」の実験。秋葉原という聖地を拠点に発信されたメッセージは、海外のファンやメディアにも大きな波紋を広げた。政府が主導するコンテンツ輸出支援の枠組みや著作権保護の議論は、この時期の熱狂がベースとなって構築されたと言っても過言ではない。サブカルチャーが国家の外交戦略として語られる道筋は、ここから拓かれたのだ。