筋斗雲という名前の由来は、中国の四大奇書の一つである『西遊記』に登場する孫悟空の術です。しかし、『西遊記』の原典と『ドラゴンボール』の設定には大きな違いが存在します。
原典『西遊記』における筋斗雲(中国語読みでジェンドウユン)は、乗り物としての雲ではなく、悟空が菩提祖師から伝授された「飛行の仙術」そのものを指します。一回転の宙返り(筋斗)を打つことで十万八千里(約5万4,000km)を一瞬で跳ぶ超絶的な移動術であり、物質としての雲を呼び出して跨がるわけではありません。
これに対し、鳥山明氏は『ドラゴンボール』を執筆するにあたり、中国古典の意匠を取り入れつつ「黄色い綿菓子のような、意思を持った不思議な乗り物」としてポップに再解釈しました。呼べば空から飛んで現れ、搭乗者の精神を見定めて乗せるという親しみやすいマスコット的ギミックへと昇華させたのは、鳥山氏ならではの卓越した翻案センスです。