『仮面ライダーカブト』での主演ブレイク以降、『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』『メイちゃんの執事』『絶対彼氏』と立て続けに大ヒット作のメインキャストを務めていた水嶋ヒロ。彼がなぜ「芸能界から干された」と強く印象付けられてしまったのか、そこには当時の芸能界の慣例とメディア構造が深く関わっています。
第1の要因は、2009年2月に敢行された絢香との電撃結婚です。当時、水嶋ヒロは24歳、絢香は21歳。双方ともにキャリアの絶頂期にありました。所属事務所への事後報告に近い形での入籍であったことから、事務所幹部との間に深刻なコミュニケーションの齟齬が生じました。当時の大手芸能プロダクションにおいて、人気絶頂の若手看板俳優が事前の根回しなく結婚することは極めて異例であり、事務所側のマネジメント計画に大きな狂いを生じさせたことは否定できません。
第2の要因は、2010年9月の研音退所時における「発表内容の乖離」です。事務所側が「執筆活動に専念するため退所(事実上の引退)」とメディア向けに発表したのに対し、水嶋ヒロ本人は直後の取材やSNS等で「芸能界を引退するつもりはない。表に出る仕事も作品を選んで続けていきたい」と主張。この公式発表と本人の意思表示のズレがワイドショーで連日センセーショナルに報じられ、「事務所を怒らせて圧力をかけられた結果、引退に追い込まれた」という強固なナラティブが世間に定着してしまいました。
第3の要因は、平成期のテレビ業界における「地上波露出=タレント価値」という単一的な評価基準です。当時はYouTubeや定額制動画配信サービス、D2Cビジネスなどの個人発信インフラが未成熟であり、地上波連続ドラマから姿を消すことはイコール「キャリアの失脚」と短絡的に結びつけられやすい時代でした。大手事務所の強固なプロモーション枠から離脱したことで、民放主要ドラマのキャスティングから外れた事実が、ネット社会で「干された」という記号として増幅され続けたのです。