検索エンジンでICLを調査する多くの人々が最も恐れるのが「失明リスク」というキーワードです。果たして、ICL手術によって視力を完全に失う可能性は実在するのでしょうか。
結論から述べると、屈折矯正の専門医による適切な衛生管理下で行われた手術において、直接的な失明に至った症例は世界的に見ても天文学的な低頻度にとどまります。しかし、「リスクが完全なゼロ」ではないこともまた冷厳な事実です。理論上、失明の危険を孕む合併症は主に以下の3点に集約されます。
第1に「術後眼内炎(細菌感染症)」です。眼球の表面を切開してレンズを挿入するため、術中あるいは術後数日以内に創部から細菌が眼球内部に侵入した場合、重篤な感染症を引き起こします。発生頻度は約0.01%〜0.05%(2,000眼〜10,000眼に1眼程度)とされています。万が一発症した場合、即座に抗菌薬の硝子体注射や緊急手術を行わなければ、最悪のシナリオとして重度の視力障害や失明に至る恐れがあります。これが「失明の可能性」として医学書に明記される主たる根拠です。
第2に「レンズ接触による早期白内障」です。かつて用いられていた初期型ICLレンズでは、自身の水晶体と人工レンズの隙間(ヴォールト)が狭すぎる場合、レンズが水晶体に擦れて濁りが生じる前嚢下白内障のリスクが数パーセント存在しました。しかし、中央に0.36mmの房水循環孔を開けた「ホールICL」が導入されて以降、水晶体の代謝が正常に維持されるようになり、白内障の発症率は0.5%未満へと激減しました。
第3に「眼圧上昇による続発性緑内障」です。眼球のサイズに対してレンズが大きすぎた場合、房水の流出口である隅角を押し潰して眼圧が急上昇(急性緑内障発作)する危険性があります。これを放置すると視神経が圧迫され、不可逆な視野欠損を招きます。現代の手術では前眼部OCTなどの超精密断層撮影を用いて眼内空間を1マイクロメートル単位で測定するため、発症は極めて稀ですが、術後の定期検診を怠った場合に重大化するリスク要因として警戒されています。