映画『紅の豚』を語る上で絶対に外せないのが、劇中でジーナがしっとりと歌い上げるシャンソン「さくらんぼの実る頃(Le Temps des cerises)」です。フランス革命やパリ・コミューンの時代から愛され続けるこの哀愁漂う名曲は、加藤登紀子さんのフランス語による歌唱によって作品世界へ深く溶け込みました。
実は、この楽曲の録音にあたっては、宮崎監督からの強いこだわりがありました。完璧に作り込まれたスタジオ録音ではなく、まるで古いバーの片隅でピアノの伴奏とともに気まぐれに歌い出したかのような、温かみと擦れ感のある音作りが追求されたのです。エンディングテーマ「時には昔の話を」とともに、加藤さんの歌声は作品全体の感情的な背骨となり、世代を超えて聴き継がれています。