俳優としての華々しい活躍の背景には、言葉と視覚表現を長年磨き続けてきた文筆家としての土壌がある。武蔵野美術大学で学んだ若き日、定職に就かず街の片隅で観察眼を研ぎ澄ませていた経験が、彼の表現の血肉となった。
自身の半生と母への想いを綴った自伝的小説『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』は、空前のベストセラーを記録し、日本中を涙で包んだ。市井の人々の弱さや情けなさ、そして誰もが抱える不器用な優しさを誰よりも知っているからこそ、彼の演じる人物には嘘がない。文字で情景を紡ぐ力と、身体で役柄を呼吸させる力。二つの才能は根底で固く結びついている。