「尼将軍」の異名で知られる北条政子と、その夫・源頼朝。二人の関係を単なる「気の強い妻と頭の上がらない夫」と捉えるのは、もはや過去の古い歴史観になりつつある。最新の歴史学においては、古文書の再解釈や当時の東国武士団の婚姻様式に関する調査が進み、二人の結びつきがより多角的な視点で解き明かされている。
教科書には載らない裏説として興味深いのが、政子の有名な「亀前(かめのまえ)事件」に対する新たな解釈だ。頼朝が妻の妊娠中に浮気相手である亀前を囲っていた屋敷を、政子が後妻打ち(うわなりうち)として打ち壊させた過激なエピソードである。従来は単なる女性の嫉妬心として描かれがちだったが、最新研究ではこれが単なる感情の爆発ではなく、北条氏という後ろ盾の威信を守り、鎌倉幕府内での北条家の政治的優位を決定づけるための計算された行動だった可能性が指摘されている。
頼朝の強烈なカリスマ性と、政子の冷徹なまでの自己主張。愛憎の真相は、互いに利用し合い、高め合う高次元の政治的パートナーシップでもあったのだ。