醸造所の中へ足を一歩進めると、そこには伝統と最先端技術が同居する独特の世界が広がっていた。発酵の鍵を握る室(むろ)の温度や湿度は、24時間体制でマイクロセンサーが監視し、クラウドにリアルタイムデータとして記録される。
しかし、最終的な判定を下すのは、職人の五感だ。蒸し米の手触り、菌糸の伸び具合、室内に満ちる微かな香りの変化を、熟練の職人が掌で確かめる。「データは環境を安定させるための道具に過ぎない。菌という生き物と対話するのは、やはり人間の感覚だ」と現場の醸造責任者は語る。100年を超えて守り継がれてきた蔵付きの菌と現代のデジタルツイン技術の融合が、ブレのない最高品質の製品を安定して量産することを可能にした。