二谷氏を語る上で避けて通れないのが、1987年に日本中を沸かせた郷ひろみ氏との結婚、そして1998年の離婚劇です。当時、視聴率40%を超えた披露宴中継は「昭和最後の豪華婚」と称されました。しかし、2人の関係は10年余りで破綻を迎えます。
離婚直後、郷ひろみ氏が赤裸々な告白本『ダディ』を上梓し、自身の女性関係や夫婦のすれ違いを一方的に公表したことで世間は騒然となりました。この事態に対し、沈黙を守り続けていた二谷氏が翌1999年に刊行した反論手記こそが『楯(たて)』でした。この書籍は瞬く間に大ベストセラーとなり、世間に衝撃を与えることになります。
手記の中で浮き彫りにされた真の離婚理由は、単なる浮気やすれ違いではなく、「家庭内におけるパートナーシップの不均衡と自己尊厳の剥奪」でした。スターの妻として家庭に尽くすことを強要され、自己の自由や意思決定を制約される構造的な閉塞感。自著の中で彼女は、子どもたちを守る防波堤(楯)となる決意と、夫の影に隠れて生きることへの拒絶を克明に綴っていました。
その後、2000年に結ばれた株式会社トライグループ創業者・平田修氏との再婚は、彼女にとって人生の大きな転換点となります。郷氏との関係が「尽くす妻と国民的スター」という主従的なものであったのに対し、平田氏との関係は「対等な知性と事業意欲を共有する共同経営者(ビジネスパートナー)」でした。家庭に閉じ込められるのではなく、二谷氏自身の才覚を信じて社長職に抜擢した平田氏との出逢いこそが、元女優の才能を経営者として開花させる最大の触媒となったのです。