近年は女性ライダーの増加に伴い、いきなり大型二輪に挑む女性も増えています。都内在住の30代女性Aさんは、テレビCMやグラビアで見た大排気量アドベンチャーバイクに一目惚れし、バイク未経験から大型二輪教習に飛び込みました。彼女の手記には当時の赤裸々な心情が綴られています。
「最初の1週間は、毎時間バイクを倒してばかりで、右腕も足もアザだらけでした。自分が乗るはずのバイクを起こすことすらできず、教官に手伝ってもらうたびに『私には向いていないんじゃないか』と教習所の更衣室で一人で泣きました。それでもすでに25万円を払ってしまったし、友人にも宣言してしまったので後戻りできず、教習の前日はプレッシャーで胃が痛くて眠れませんでした」
Aさんは最終的に6時限の補修を経て卒業に至りましたが、この告白には行動経済学でいう「サンクコスト効果(埋没費用効果)」の罠が鮮明に表れています。「高額な教習料金をすでに支払ったのだから、途中でやめるわけにはいかない」という執着心が過度な精神的ストレスを生み、冷静な判断を狂わせてしまうのです。
さらに、初心者にありがちな「ダニング=クルーガー効果(能力の低い段階ほど自身の能力を過大評価してしまう心理傾向)」も挫折の引き金になります。「車を何年も無事故で運転しているから、バイクもすぐ乗れるだろう」と高をくくって入校した人ほど、身体感覚の乖離に直面した際のショックが大きく、モチベーションの完全な喪失につながりやすい傾向があります。