DEL-1(Developmental Endothelial Locus-1、遺伝子名:EDIL3)は、主に血管内皮細胞や一部の免疫細胞から分泌される内因性の糖タンパク質です。もともとは血管新生に関わる因子として同定されましたが、近年の分子生物学的解析によって、免疫応答のバランスを絶妙に保つ「マスターレギュレーター(統括制御因子)」としての役割が浮き彫りになりました。
人間をはじめとする哺乳類の体内では、細菌感染や組織損傷が起きると白血球の一種である「好中球」が真っ先に現場へ駆けつけます。好中球は病原体を排除する不可欠な防衛軍ですが、集まりすぎて暴走すると、自らの組織までも破壊してしまう「諸刃の剣」となります。DEL-1タンパク質は、この好中球の過剰な流入を食い止め、炎症の「引き際」をコントロールする天然のストッパーとして機能しています。
加齢や特定の疾患によって組織内のDEL-1発現量が低下すると、ブレーキが効かなくなった免疫システムが慢性的な炎症状態を引き起こし、組織の破壊や線維化を進行させることが分かってきました。生体が自前で持っているこの防御因子を補う、あるいは活性化させるアプローチこそが、次世代医療における大きなブレイクスルーとして注目されています。