「ききつち」の波動は、農業の枠組みを飛び越えてトップレストランのキッチンにまで届いている。都内の高級フレンチや和食の名店では、ソムリエがワインのテロワールを語るように、食材が育った土壌の質合いや香りを鑑別する「利き土」のトレーニングを取り入れる動きが出てきた。
作物の糖度やアミノ酸のバランスは、肥料の量以上に「どれほど豊かな土壌生態系の中で育ったか」に左右される。ある有名シェフは「土の微動音や香りの深さが豊かな圃場で育った根菜は、加熱したときの甘みの奥行きと香りの持続力がまるで違う」と力説する。皿の上の料理のクオリティを本質から高めるため、シェフ自らが産地に赴き、自らの五感で土の状態を「聞き取る」光景は、もはや珍しいものではなくなった。