足利事件は決して孤立した悲劇ではない。群馬県と栃木県の県境、半径わずか十数キロメートル圏内で、1979年から1996年にかけて5人もの幼い少女が姿を消すか遺体となって発見された。これら一連の事件は現在、北関東連続幼女誘拐殺人事件という総称で語られている。
被害者の年齢、犯行が行われた曜日、パチンコ店や河川敷という現場のロケーション、そして遺体の遺棄方法に至るまで、手口には鳥肌が立つほどの共通項が存在する。同一犯によるシリアルキラーの凶行である可能性は極めて高い。
だが、警察は県境という管轄の壁に阻まれ、広域捜査を機能させることができなかった。足利事件で菅家氏を犯人に仕立て上げてしまったがために、「他の事件も同一犯である」と認めるわけにはいかなかったのだ。冤罪の隠蔽が、さらなる被害を生む土壌を作ったと言わざるを得ない。