「毎日欠かさず飲んでいるけれど、体積毒のように薬が蓄積しているのではないか」という疑問は、長期処方を受ける多くの患者が抱く共通の懸念です。抗ヒスタミン薬が体内で果たす役割は、アレルギー反応の引き金となるヒスタミンが神経や血管の受容体(H1受容体)に結合するのをブロックすることにあります。この作用機序そのものは、決められた用量を守っている限り、体内組織を破壊したり不可逆的なダメージを蓄積させたりするものではありません。
しかし、薬を連用することで起きる生体反応には、見逃せない側面が存在します。まず懸念されるのが抗ヒスタミン薬の副作用(眠気・だるさ)の慢性化です。特に中枢神経抑制作用を持つ薬剤を連用していると、本人が「眠気を感じていない」と自覚していても、脳の認知機能や集中力、判断速度が著しく低下するインペアードパフォーマンス(鈍重脳)という状態に陥ります。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会などの調査でも、この状態でのデスクワークや車の運転は、酒気帯び運転に匹敵するパフォーマンス低下を招くことが警告されています。
臓器への負荷という観点では、抗ヒスタミン薬による肝機能や腎臓への影響に目を向ける必要があります。大半の抗ヒスタミン薬は肝臓で代謝され、腎臓から尿中へと排泄されます。健康な成人が添付文書通りの用法用量を守っている限り、劇症肝炎や急性腎不全を起こす頻度は極めて稀(0.1%未満の頻度不明事象)とされています。しかし、基礎疾患を持つ方や高齢者が数カ月以上にわたり連用する場合、定期的な生化学血液検査でAST、ALT、γ-GTP、eGFRなどの数値をモニタリングすることは医療安全上、不可欠な前提条件です。