ネットを利用した自死志願者への接近・凶悪犯罪の恐ろしさを決定的に知らしめたのが、2017年10月に神奈川県座間市で発覚した「座間9人殺害事件」です。アパートの一室から男女9人の遺体が発見されたこの事件で、犯人の男(死刑確定)が用いた手段は、まさにSNS上の「自殺募集」を悪用した計画的な罠でした。
公判記録や報道陣の取材資料、関係者の証言によると、犯人はSNS上で自死をほのめかす投稿を繰り返す女性たちに対し、別名義のアカウントを用いて「一緒に死にましょう」「話し相手になります」「道具はすべてこちらで用意できます」といった甘言を送り、巧みに警戒心を解いていきました。孤独感に苛まれていた被害者たちは、自身の苦痛を否定せず受け止めてくれるような犯人のメッセージに安堵し、指定されたアパートへ向かってしまいました。
しかし、部屋に入った瞬間に待っていたのは共死などではなく、抵抗を封じられた上での一方的な性的暴行と金銭の略奪、そして無残な殺害でした。公判の供述で犯人は、「死にたいと言っている人は警察に駆け込む心配が少なく、誘い出しやすい都合のいい道具だった」という趣旨の発言を残しています。この悲惨な事件の経緯は、「死にたい」と発信すること自体が、最凶の犯罪者を自ら呼び寄せる結果になりかねないという残酷な真実を証明しています。