扉をくぐると、まず目に飛び込んでくるのは深紅のベルベット地が映えるソファーと、天井で静かに輝くゴージャスなシャンデリアだ。壁面に飾られた絵画や、重厚な木枠のインテリアは、かつて高度経済成長期に人々が憧れた「洋風の豪華さ」を今に伝えている。
「昔はこれが最先端の贅沢だったんですよ」。そう語る常連の70代男性は、一杯のブレンドを前に微笑む。当時の職人が仕たてた内装は、50年以上が経過した今も色褪せるどころか、時間の経過だけがつくり出せる独特の深みを醸し出している。足を踏み入れただけで、一瞬にして別の時代へとタイムスリップしたかのような錯覚に陥る。