「観光客がたくさん来てくれるのはありがたい。でも、子どもが小遣いを握りしめて買いに来られなくなったら、ここはもう菓子屋横丁じゃないよ」
50年以上にわたり店先に立ち続けるある店主は、煎餅の焼き網を返しながらそう呟いた。インバウンド需要の高まりとともに、高単価な土産物へシフトする誘惑は常にある。それでも、数十円の駄菓子を棚に並べ続け、計算がおぼつかない子どもの買い物を辛抱強く待つ姿勢を崩さない店は多い。
計算ドリルを片手に「あといくら買える?」と聞いてくる近所の子どもたちとのやり取りこそが、この場所の血肉だ。利益効率だけを追求すれば淘汰されてしまうような細やかなコミュニケーションを、文化としてどう残していくか。店主たちの頑ななこだわりが、この路地の結界を守っている。