伝統の枠組みで真っ向勝負を挑んだのが、TBS看板枠である日曜劇場の『さよならマエストロ〜父と私のアパッシオナート〜』だ。天才指揮者でありながら家族を壊してしまった父親と、音楽を嫌悪する娘の葛藤を描いた本作は、廃部寸前の市民オーケストラを舞台に心揺さぶるハーモニーを紡ぎ出した。
西島秀俊と芦田愛菜という確かな実力派が繰り広げる緊迫感あふれる会話劇は、家族という最も身近で厄介な共同体の傷と再生を丁寧に掬い取る。クラシックの名曲が持つ普遍的な叙情性と、地方都市に生きる名もなき市民たちの再起の物語が見事に重なり合い、日曜の夜にふさわしい深い余韻とカタルシスを残した。