2013年ワールド・ベースボール・クラシックでの台湾代表投手陣の牽制動作や癖、マウンド上の間合いは、ベンチにいた時から入念に分析されていた。当時、阪神タイガースで不動のショートとして鉄人ぶりを発揮していた鳥谷敬は、決して無謀なギャンブルに出たわけではない。
相手投手の捕手への目線、わずかな重心の移動。一瞬の隙を見逃さないプロフェッショナルな眼差しが、成功確率を極限まで高めていた。ベンチからのノーサインに近い自重の空気が漂う中、自らの判断でスタートを切る度胸。プロ野球の舞台で培われた勝負勘が、奇跡の扉を開けた瞬間だった。