二人の思想的共鳴が最も目に見える形で結実したのが、2000年代中盤以降の「地形ブーム」です。2005年に刊行された中沢新一の主著『アースダイバー』は、約1万年前から数千年前の縄文海進期の古地図(縄文地図)を現代の東京地図に重ね合わせるという斬新な手法で、都市論に革命を起こしました。
中沢が提示したのは、武蔵野台地が海へと落ち込む「岬」の先端に神社や寺院、高級住宅街が配置され、かつて海や谷底だった「低地」に庶民の盛り場、市場、芸能空間、被差別コミュニティが形成されたという構造です。都市のインフラや地価の論理ではなく、「縄文時代から続く地形の記憶が無意識のうちに現代の東京を規定している」という発見は読者に強烈な衝撃を与えました。
そしてこの『アースダイバー』の思想的衝撃とほぼ時を同じくして、テレビメディアの側から圧倒的な身体性と軽妙さをもって呼応したのが、タモリの『ブラタモリ』(2008年パイロット版放送開始)でした。番組内でタモリが見せる「古地図片手に段差や坂道を愛で、土地の成り立ちを即座に見抜く」プレイスタイルは、まさにアースダイバー的実践そのものでした。