かつて90年代前半、東京・渋谷のカルチャーシーンから花開いた「渋谷系」という現象。その中心にいた青年は、過去の膨大な音楽アーカイブを自在にコラージュし、時代のサウンドトラックを作り上げた。しかし、彼が他のアーティストと一線を画していたのは、その参照点を絶えず更新し、自己模倣に陥らなかった点にある。
流行が消費され去っていくなかで、彼は早くから視線を世界に向け、音響そのものを探求する実験家へと脱皮を遂げた。2026年の今振り返れば、彼が描いてきた軌跡は、一人のポップスターが「真の音響作家」へと進化していく極めて純粋なドキュメンタリーであったと言える。