「有酸素運動をしているのに痩せない」という切実な悩みに対し、Fit Journalなどの運動生理学レポートや国内外の臨床研究が示す結論は残酷です。走れば走るほど、かえって「脂肪が落ちにくく太りやすい身体」を作り出してしまっているケースが後を絶ちません。
最大の落とし穴は、長時間の単一的な有酸素運動が引き起こす筋肉量の減少(カタボリック作用)です。体脂肪はエネルギー源として活用される一方で、長時間のランニングを続けると体内ではストレスホルモンであるコルチゾールが過剰に分泌されます。血中アミノ酸濃度が低下すると、生体は生命維持のために自らの筋肉を分解し、グルコースを作り出そうとします。結果として筋肉量が削られ、体温維持や内臓活動を支える基礎代謝を上げる方法とは真逆の「代謝低下スパイラル」に陥るわけです。
もう一つの要因が、行動心理学でいう「代償行動(ライセンシング効果)」です。「今日40分走ったから大丈夫」という無意識の安心感が食欲増進ホルモン(グレリン)の分泌と結びつき、消費カロリー以上の糖質や脂質を摂取してしまう実態が確認されています。ランニング40分で消費できるエネルギーは一般的な体格で約250〜300kcal程度に過ぎず、小さめのおにぎり1個半、あるいはラテ1杯で容易に相殺されてしまいます。
体重計の数字だけに一喜一憂し、筋肉量を削り落として体脂肪率を高めてしまう現象は、ダイエット効果の真相における最大の盲点です。「体重が落ちたのに腹周りの浮き輪肉が残る」「肌のハリが失われてやつれた印象になる」という現象は、まさに有酸素運動偏重の歪みが生んだ典型的な結末と言えます。