作品に圧倒的なリアリティと深い情愛を吹き込んだのは、主演を務めた名優・西田敏行の存在感にほかならない。哀愁漂う表情と温かみのある佇まいで、人生の終着点へと向かう男の弱さと優しさを泥臭く演じきった。撮影現場では犬の「ハッピー」役の秋田犬との信頼関係を築くため、カメラが回っていない時間も常に声をかけ、抱きしめ続けていたという秘話が残されている。
一方で、彼らの足跡を追う市役所職員・奥津を演じた玉山鉄二の静かな熱演も見逃せない。東宝配給のもと、瀧本智行監督が指揮を執った本作において、玉山演じる奥津は観客と同じ「第三者の目線」として物語を紐解いていく。自らの孤独な過去と重ね合わせながら真実に迫る奥津の葛藤が、ドラマ全体に重厚な深みを与えているのだ。