メガホンを取った五社英雄監督といえば、情念とバイオレンスを濃密に描く巨匠として知られる。だが、この映画『226』で彼が挑んだのは、単なるクーデターのスペクタクルではない。農村の飢餓や貧困に心を痛め、「昭和維新」という純粋すぎる理想に憑りつかれた青年将校たちの内面劇だ。
当時、東北地方を中心に農村は娘の身売りが横行するほどの深刻な困窮に喘いでいた。兵士たちの故郷の悲惨な実態を目の当たりにした大日本帝国陸軍の若き将校たちは、私腹を肥やす財閥や腐敗した政治家たちを排除し、天皇親政による国家改造を断行するほかないと思い詰めていく。五社監督は彼らの決起を単純な狂気として切り捨てるのではなく、破滅へ向かう若者たちの哀切と孤立無援の焦燥感を、圧倒的な映像美のなかに焼き付けた。