「料理に国境はない」——昭和から令和に至るまで、初代店主・道場六三郎氏が叫び続けてきたこの哲学は、今や日本料理界の金字塔となった。西洋料理のソースや中華のスパイスを躊躇なく取り入れ、和食の基本である出汁の旨味と融合させる。その先駆的なスタイルは、当時の保守的な料理界に強い衝撃を与えた。
2026年の献立を開くと、そのアイデンティティは一層研ぎ澄まされている。季節の刺身に添えられた自家製たれの意外性や、一見すると洋風に思える焼き物に潜む深い昆布の味わい。皿が運ばれてくるたび、客席からは吐息のような歓声が漏れる。伝統を誇りつつも、決して過去の栄光に甘んじない姿勢がそこにはある。