世論調査において定年制への賛成意見が圧倒的多数を占めるにもかかわらず、なぜ国会全体での法制化が進まないのか。その最大の理由は、「憲法適合性の問題」と「現職議員自身の利害対立」という2つの強固な障壁にあります。
法理的な側面において、日本国憲法第44条は「両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない」と定めています。ここに「年齢」は明記されていないものの、最高裁判所の判例や学説では、国民の基本的権利である「被選挙権(憲法第15条)」を一律の年齢上限で奪うことは法の下の平等(憲法第14条)に抵触する恐れがあると慎重な見解が根強く存在します。
さらに反対派が主張する決定的な論理が、「政治家の適格性を判断するのは法律ではなく、主権者たる有権者の投票であるべき」という原則論です。「高齢であっても地域から厚い信任を得ている議員を排除することは、有権者の選択肢を不当に狭める」という建前が掲げられます。しかしその深層には、自らの身分と議席を守りたいベテラン議員が立法権を握っているという、制度設計者と当事者が一致する構造的矛盾が存在します。