この感動的な手記を原案として製作された映画が、日本映画の秀作『ママ、ごはんまだ?』である。監督を務めた白羽弥仁は、日台の美しい風景と丹念な料理の描写を織り交ぜながら、淡々としつつも深い余韻を残す映像美を作り上げた。制作・配給を手掛けたアイエス・フィールドの丁寧なプロデュースワークも光り、単なるノスタルジーに終わらない普遍的な家族劇として結実した。
なかでも、母親である一青かづ枝役を熱演した女優・河合美智子の演技は圧巻だった。異国の風習に戸惑いながらも明るく前を向き、病に倒れながらも娘たちの未来を信じ続けた母の強さと脆さを、身体全体で表現してみせた。湯気の向こうに見せる優しい眼差しは、観る者すべての「母の記憶」を呼び覚ます力を持っている。