この劇場の歴史を語る上で欠かせないのが、鬼才・つかこうへいの存在だ。1970年代、彼が放った金字塔『熱海殺人事件』は、紀伊國屋ホールの舞台で爆発的なムーブメントを引き起こした。怒号のような台詞の応酬、クラシック音楽に乗せて繰り広げられる過激で切ないドラマは、当時の観客に強烈な衝撃を与えた。
『熱海殺人事件』は劇場の代名詞となり、今なおキャストを変えながら再演が重ねられている。つかこうへいが持ち込んだ圧倒的な熱量とスピード感は、この劇場の音響と空間構造だからこそ完成されたと言っても過言ではない。伝説は今も過去のものではなく、現在の舞台上にも確実に生き続けている。